第43話【3年後の今】

最後の投稿から3年経ってしまった。

人生はじめての手術の前日に、別の腫瘍があったことを告げられた瞬間からいろいろなことがジェットコースターのように起きていた。

それを理由にブログが止まっていたけれど、読んでくれている方が心配する。
わたしもそうだったのだけれど、自分の病気のことを勉強するために医学本のほか、闘病中の方のブログを読みまくっていた。

それが「ある日」で止まったまま更新されていないと、言いようもない不安があった。

だからまた再開します。

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第40話【入院】

自分の闘病生活の中で経験したことや学んだことが
少しでも誰かの参考になれば、と思ってできるだけ細かく
書こうと思って始めたブログだけれどもすっかりご無沙汰してしまった。
むしろうんともすんとも言わないブログに、
具合が悪いのではないか?と
周囲を心配させているだけなので
一気に入院初日まで話を進めまする。

私がかかっている病院では、手術の前日に入院すれば良かったのだけれど、
わたしの術日の前日は祝日だったので(事前の検査ができない)、
2日前に入院することになった。

不思議なことに【手術】は不安だっだけれど【入院】はちょっと楽しみだった。
だって良いほうに考えれば、食事は作らなくても出てくるのですよ!
そして誰に文句を言われることもなく終日ベッドで堂々と
眠っていられるんですよ!
入院直前が忙しかったので、やっと休憩できる、と期待しちゃうでしょ。

私の部屋はフロアの端の6人部屋。
事務スタッフに案内されて部屋に入ると、左右に3つづつベッドが並んでいて
それぞれがクリーム色のカーテンで仕切られている。
私のベッドは左側の出入り口に一番近いベッドだった。
小さな冷蔵庫と、有料のテレビが備えつけられている。

これにはテンションが上がりまくった。

「個室っ!!」

6人部屋をお願いしたとき、なんとなく自衛隊の訓練時の記憶が強かったのか、
ベッドだけが6個どん、どん、どん、と置かれているだけの
ちょっと冷たそうな真っ白い部屋を想像していた。
だから暖かいクリーム色の壁とカーテンで仕切られていて、
プライバシーがあることに異常に興奮してしまった。
6人部屋だけど私の中では立派な「個室」なのだ。

予想以上に良い環境に気をよくした私はさっそく、
ご一緒する部屋の方に挨拶を!と勢い込んだが・・・

カーテンが閉まっているのでよく分からないが、
それぞれの体調でおやすみになっているようだった。
よく考えればここは病室なので当たり前だ。
休んでいる人をわざわざ起こすのもどうかと思うので
カーテンが開いた時やらタイミングがあったときやらに
ご挨拶すれば良いか、ということして荷をほどいた。

この日の午後は術前検査があるのだ。
それまでに手術の時に担当してくださる麻酔科の先生が来て
お話しがあるとのことだったのだけれど、
先生がお忙しいのか、なかなかお見えにならず
付添で来てくれていた母とふたり、ただただボーとベッドに腰掛けて
母はこれからの入院生活について、
私は1回目の病院食となる昼食について、それぞれ思いを馳せていた。

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第41話【術前検査】

術前検査は【超音波】【MRI】をすることになっていた。
手術の前に最終的に検査をして備えるのだそうだ。
それぞれ何度か経験しているので特に不安はない。
通常は待たされることも多いのだけれど、入院患者ということで
外来の検査が終わるまで病室で待機できた。

朝の10時に入院し、麻酔科の先生の話を聞いて同意書にサインをし、
昼食を食べただけなのだけれどなんとなく眠くて仕方がなかった。
ベッドで横になっていると看護師さんが声掛けに来てくれたので
寝ぼけながら検査を受けた。

MRIは特に問題なく終わった。
あとは超音波検査。これもいつも通り終わるだろうと思っていた。
ただ今回、私の検査に立ち会っている検査技師の方がいつもより多い気がした。
たまに若い技師さんや海外の学生が【研修】しているからかな、と思った。
その場合はなんらかの断りとかいつもあるのだけれど。

ま、いっか。
なんて思っている間に右の検査が終わった。
この日は手術の箇所を示すためにペンで印を描かれる。

「じゃ次は左をチェックしますね」と検査技師の方が言った。

思わず「はい。」と答えたけれど(?。左も?)

手術するのは【右胸】なんだけれど。
念のためなのかな?
いつもの検査でも左右行っていたから
あんまり何も考えていなかった。

すぐ終わると思った左胸の検査。
いつもより多い検査技師さんたちが画面を見ながら何やら話し込んでいて
右側より時間がかかっている。

いくらなんでも時間がかかり過ぎじゃない?
割とのんびりしている自分もさすがにイライラしてきた頃に、

「じゃ、マークつけていきますね」と言われた。

(?????)

そのマーキングもえらく手こずっているようだった。
画面を見ているベテラン(と思う)技師さんの指示に従って
最初は若い人が印を書いていたのだが、意図した箇所ではないのか
なんども修正して、結局ベテランの技師さんが書くことになった。

(もしかして、勘違いしている?)

ぎょっとした。
なんでか分からないけど、手術の必要がない左胸が切られてしまうかもしれない。
いわゆる「医療事故」?

急に怖くなってきたので、胸をさらしたまま勇気を出して言ってみた。

「あの、手術をするのは右側なのですが」

言った瞬間、検査室の場が固まったのをハッキリ感じた。

少しの沈黙のあと、ベテラン技師さんが戸惑ったように、
でもできるだけ私を気遣うように確認した。

「C先生からお話しは伺っていないですか?」

状況がよく理解できなかったので今日の流れを話して
C先生にはまだ会っていないことを伝えた。
若い技師さんが部屋を出て行きどこかへ連絡を取りにいったようだ。すぐに戻ってきた若い技師さんがベテラン技師さんに耳打ちする。

「このあとC先生がご説明しますからね。
とりあえず印だけつけておきますからね」

どうして手術の必要がない左胸にも印をつけるのか、
その理由はそこでは話してもらえなかった。

 

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