私は3週間に1度、FEC療法を行うことになっていた。
投薬日から1週間は身体が重く、疲れやすさと
「ゆらゆら」めまいを感じていたが
それ以外の症状は特になかった。
2週目には脱毛が始まったが、身体もめまいも
だいぶ軽くなった気がした。
2週目は白血球が減少するので感染症に気を付けるよう
指導されていた。
3週目からは体調も回復する、と教えられていた。
私は2週目からだいぶ体調も回復していたので
これから迎える3週目についてある思いがあった。
(もう少し、働きたい)
急に治療を開始することになったので、
それでなくても年中、人手不足の
ダブルワークの職場には迷惑と心配をかけてしまっている。
私自身も貧乏性なのか、元気なうちに
自分の時間を少しでもお金に変えたい、という思いと
身体を動かしておきたいという気持ちがあった。
主任のDさんに連絡を取って体調の報告をする。
昼間なら体調も良い。夜も21時くらいまでならやれそうだ。
人が足りない日はないか。
速攻で返事がきた。勝手なお願いだったが快くOKしてくれた。
今回は2回目のFEC療法の直前の3日間
休憩を回す要員として短時間だが入ることになった。
まだ1回目の投薬だったが、なんとなく今後の治療と
体調変化について予測ができる。
来月からは自分の体調と人が足りない日を
調整して事前に希望を出せそうだ。
涙、涙、のご挨拶から3週間しか経ってない。
正直いうとちょっと恥ずかしかった。
治療が始まる前はどうなるか分からなかったとはいえ、
ちょっと大げさだったかなぁ、と思い出すと赤面してしまう。
みんなどう思うかしら?
「おはようございます」
すでにレジに入っている担当者に挨拶をして交代する。
「おはようござ・・・ええっ!?」
そりゃ、そうだわな。
「すいません。思いのほか元気でして・・・。
恥ずかしながら、時短復帰、致しました」
当たり前だが驚かれてしまった。
でも次の瞬間にはみんなでクスクス笑ってしまった。
復帰した日は初めてウィッグをつけていったので
私の休憩中の話題はもっぱらウィッグだった。
「よくできているねぇ」
「ここの頭頂部の肌色がポイントなんですよ」
ウィッグ屋さんの営業トーク、そのままだった。
脱毛のピークだったので、
ウィッグの下に被ったネットからも
髪がこぼれていたのかもしれない。
話しながら、肩や背中についていた髪を
そっと取り除いてくれた優しさに
ただ、ただ、感謝の気持ちしかなかった。