第21話【脱毛2】

私の脱毛のピークは2週間だった。
この2週間、私の髪の毛は
低温のシャワーに流され、
弱冷風のドライヤーで飛ばされ、
枕カバーに自ら突っ込んでゆき、
勢いよく抜けていった。
あまりによく抜けていくので
完全にツルツル頭になることを想像していた。

でもツルツル頭になってしまうのは正直イヤではなかった。
だって女性が頭をツルツルにするなんて
なかなかできないことだし!
そういえば昔見た、映画「G.Iジェーン」の
デミ・ムーアはカッコ良かったなぁ。
そうだ、せっかくだから真似して写真を撮ろうか、とまで考えていて
密かに楽しみにしていたのだ。

けれどもそう、うまくはいかなかった。
そろそろピークも終わったのかな、という頃に鏡で見た
私の髪の毛は、頭頂部を中心にO型に抜けていた。
すっかり地肌は見えているのだけれども
それでも厳しい脱毛期間を耐え抜いた少量の
髪の毛が「申しわけ~」なさそうにヘロヘロになりながら
頭が剥き出しになるのを辛うじて守っている。
写真を撮るには微妙すぎだ。

かと言って、せっかく残った髪の毛や
投薬中の白血球が少ない時期に
頭に傷をつけてしまう可能性を考えると
剃るのはためらわれて写真はすぐに諦めた。

脱毛が始まると髪の量が毎日減っていくので
外出時に被っているキャップやウィッグがだんだんブカブカになる。
髪の毛の有無で頭のサイズってこんなに変わるんだ。
ウィッグについては、ある程度脱毛のピークが落ち着いたら
サイズ直しをしてもらうことになっていたのだが
手持ちの帽子やキャップのサイズはそうはいかないので
下に不織布のキャップをつけていた。
夏目前の時期に被るキャップやウィッグはちょっとしたストレス。

頭が暑い。蒸れる。
事務所で社長が席を外す一瞬を狙っては
被り物の隙間から頭に扇風機の風を送る。
ああ、なんて涼しいんだろう!

ふうふう言いながら帰宅したらすぐに被り物を取る。
鏡に映る頭には汗でクタクタになった髪が張り付いている。
卵のような丸い頭は、玉のような汗を大量にかいている。

今日も一日、過酷な状況に耐えた髪の毛を思う。
「君たちは今日も良く頑張った」

なんとなく涙が滲む。

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA