第22話【痛み】

2回目の投薬の夜はひどい悪心に苦しんだが、
翌朝にはだいぶ軽減されていた。
ただ食事をするとムカムカと気持ちが悪くなるので
この間は出先での食事は控えていた。

それも3日、4日もすればその心配もなくなった。
ただ今回は、投薬の夜から身体が時々痛くなることがあった。

筋肉痛や関節炎の副作用が出ることもある、とレジメに
記載されていたがそのどちらでもない感じ。

決まった箇所が痛い、ということではなく
そのときによって左肩の付け根だったり
しこりのある右胸だったり、足の付け根だったり、指が痛い。
身体の奥をグッと押されているような痛みが
断続的に起こった。

たいてい我慢できるのだが、思わず呻いてしまうほどの
痛みが時々、走る時がある。
正直、その時は不安になる。

「痛い、痛い」と呻いてしまうと
自分の言葉で痛みが倍増する気がした。
なにより聞いているパートナーも心配する。

とは言え、心配かけないように声を我慢するのも結構なストレス。
自分の苦痛を発散または和らげ、
周囲の人に余計な心配をかける方法はないか?
考えろ、考えろ、O野。考えていれば少し気も紛れる。

(あ、そうだ!)

私は映画や海外ドラマが好きなのでよく見ているのだが
その中の決め台詞やリアクションを「痛い」という
いう言葉に置き換えてみるのはどうだ?

良い歳をした大人が考えついた事にしては
ややアホっぽい感は否めないが・・・
この際、やってみる。

でも意外と出てこないな。というか長いと痛みの症状に合わないな。
一言台詞が良さそうだ。

「ぐわしっ!」

ほどよく痛みが始まった。
とっさに出た言葉が「ぐわし」だった。
うん。なかなか良さそうだ。アニメだけど。
一瞬の痛みを一言で表現してる。
しかも言った本人が笑い転げてる。

「ひでぶ!」

次の痛みに合わせてみる。
う~ん。
瞬間的なタイミングは良いけど
これって死んじゃう時の台詞だよねぇ?

やっぱ「ぐわし」だな。
笑っちゃうのは良いよね。だいぶ気持ちが和らぐ。

「何事なの?」

あ、でも周囲には事前に説明しないと
やっぱり心配になって飛んできます。

 

 

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