第32話【禁煙中間報告】

最初の禁煙はたった9日間で失敗してしまった。

(ここまで我慢できるのだから、1本くらい大丈夫だろう)

この1本であっと言う間に喫煙者に戻ってしまった。
気のせいかもしれないが、タバコを止めていた9日間は
胸のしこりも少し柔らかくなっていたような気がしていた。
それが喫煙するようになって、
しこりがまた硬く大きくなってしまった焦りもあり、
FEC3クール目を機に禁煙外来を利用し
再度、禁煙にチャレンジしていた。

今日で再挑戦28日目。
あんなに大変な思いをして手に入れた禁煙薬のチャンピックス。
実は4日目から服用していない。
人間、本当にイヤな事は無意識のうちに
記憶から消すような働きがあるのだろうか。

FEC投薬日に服用したからか、悪心は、なかなかにキツかった。
その状態でタバコを吸えばさらに気持ち悪くなって、
二度と吸いたい、とは思わなくなるのでは!?とかなりの荒療治をやってみた。

結果的に「二度と飲みたくない!チャンピックス」
と、【狙い】がやや逸れて、いつの間にか服用を忘れてしまっていた。
ただいずれにしても、タバコを吸いたいと思う気持ちも
だいぶ減ってきている。
よしよし。

でもまだ28日目なんだよな。
禁煙成功って3か月が目安と考えるとまだまだ油断は大敵。
特に仕事終わったあととかね。
ビールもダメね。吸いたくなるので必然的に禁酒になる。
それでもって、タバコの話もダメね。
どんなに身体に悪いって話でも、してると吸いたくなっちゃうのよね。

だから今日はこれまでよ。

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第33話【低空飛行】

12週間に及ぶFEC治療もそろそろ終わり
来週からは新しい投薬が始まる。
特に副作用はなく「元気、元気」と思ってきたが、
ここにきてなんとなく体調が優れない日が多くなった。
ベットから起き上がれない、というほどではないが、
とにかく疲れやすく、何をするにも気力不足で
「これから疲れるコトをする」という覚悟と、
最短で終わる手順を確認してから作業にかかる始末だ。

これは都内でも37℃を記録した、今年の猛暑のせいなのか、
強い薬が段々と身体の中に蓄積されているせいなのか、
あるいは両方のせいだからなのか。

自分で出来るコトは自分でやるし、やりたい。
でも人の世話が今は正直めんどくさい。
特別扱いはしてもらわなくて大丈夫。
自分のコトは自分でする。
だからあなたも自分のコトは自分でやってくれ、と
イライラするこの頃。

体力や気力に余裕がなくなってきたのかな。
それともモノの見え方、感じ方が変わってきたのかな。

こういう体調や心理状態って家族や友人には
話しておいたほうが良いんだろうね。
本人もイライラしているけど、
周囲の人も困惑して精神的に疲れるだろうから。
でも職場の人には言いにくいよね。

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第34話【ラブレター】

8月のお盆明けから名古屋にいる弟夫婦が
甥っ子を連れて実家に遊びに来るというので
私もパートナーと共に週末に帰省した。
義妹によると私が甥っ子に会うのは3年ぶりとのこと。
久しぶりに会った甥っ子は小学校1年生になっていた。

あんなに人見知りだった甥っ子が、
すっかり人懐っこい甘え上手になって
久しぶりに会う伯母はもうすっかりメロメロの、
でも一緒に遊ぶ体力もだいぶ落ちてしまったので
ヘロヘロにされてしまいましたよ。

幼稚園の数年と小学校の数か月、
このちっちゃい男の子なりに世間の波にもまれて成長したんだね。
そしてきっと、あっと言う間に中学生になって大人になってしまうんだね。

「いやいや、お義姉さん、それはいくらなんでも気が早いですよ。
その前にもっと会いましょうよ。」

的確な突っ込みを頂いた。

弟家族が旧友に会いに出かけている間、
私はかつて自分の部屋だった場所の
荷物を少し整理しようと試みた。

実家には荷物はほとんど残していない。
ただどうしてもなんとかしないといけない物が少し残っていた。

日記と手紙。

残している日記は小学生から中学生にかけてのもので
誰某ちゃんとケンカしただの、誰某くんがカッコイイだの、
今読み返すと、本当にどうでも良い内容で、
それでいて結構、恥ずかしい内容なので開いていない。
でもなんとなく捨てられない。
人に見られたら恥ずかしいので残したくないのだが、
やっぱりまだ捨てられない。

次は手紙が入っている箱。

もっと赤面するものが入っていた。
10代から20代にかけてもらった、いわゆるラブレター。
幸せな頃のもあれば、恨み辛みが書かれた最後の手紙もあった。
恨み辛みの手紙は、当時は腹が立ったけれど
今読み返すと胸が痛い指摘ばかりだった。
これがいわゆる「若すぎて」ってヤツか。ごめん。
それにしてもよくこんなに取っておいたね。私。
これもやっぱりまだ捨てられないな。

最後に見つけたのは、母子手帳とへその緒が入った小さな箱と
保育園の頃、母と先生がやりとりしていたノート。
どうも私も甥っ子と同じで、入園当初は内気で人見知りだったようだ。
身体を動かしたりすることも苦手で、
教室の隅にポツンとしていることが多かったみたい。
それが保育園のいろんな行事を通して周りのお友達と仲良くなって、
苦手な鉄棒や山登りなど黙々とできるまで
一人努力する子どもになっていったらしい。
この間の母と先生のやりとり。
どちらが上、ということもなく対等の立場で私を心配してくれて
そして成長を喜んでくれているやりとり。

くぅ。
愛されて育ったんだな。感謝、という言葉しか出てこない。
私も社会に恩返しする年齢になっているのに、できているだろうか。
自分のことしか見えなくなったとき、読み返そう。
だからこれは捨てないで取っておく。

あぁ、結局またどれも捨てられなかった。

ちなみに、保育園のお誕生日カードに
【将来は何になるの?】という先生の質問と私の回答が書いてあった。

私は【看護婦さん(当時の表記)】か【歌手】になるんだって。

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