第10話【禁酒禁煙・食生活】

経済的な心配については、Eさんのおかげでひとまず落ち着いた。
であれば治療に向けた身体の準備に入ろうと考えた。

まずは自発的に食生活の見直し。
正直言って今までの私は「白飯と肉・白飯と肉・白飯と肉」生活だった。
野菜やフルーツは嫌いで、酒とたばこもやっていた。
偏った食生活はどんな病気でも良いわけがない。

山盛りの白飯をかなり減らし、
最近流行っているというパワーサラダ(風)を取り入れた。
ビタミン、ミネラル、食物繊維、タンパク質に脂質などの
栄養素を無理なく摂取することができるというパワーサラダ。
たんぱく質50g、野菜は175g、果物は100g程度と
作り方にポイントがあるらしいのだが、そもそも大雑把な人間が、
「こんな感じか?」で作っているので、「風」。
それでもおいしかった。
今までの食生活の反省とこれからの治療を耐えるための危機感からか
身体の中心が「野菜をくれ!野菜をくれ!」と叫んでいた。

ちなみに写真はサーモンとアドガドサラダ丼。
野菜はオクラ・ブロッコリースプラウトやトマト、レタスなど
適当なのだけれど、とりあえず彩りに注意して作ってみた。
マヨネーズをちょっと丼の上にかけて、わさびを溶かした出汁醤油で頂く。

山盛りご飯は「白飯愛」がそうさせていたのだが、 “第10話【禁酒禁煙・食生活】” の続きを読む

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第24話【禁煙外来~チャンピックス】

私は抗がん剤治療を機に「禁酒・禁煙」を宣言した。
ところが実際に実践できたのはたった9日間だった。
これは、思いのほか苦しい副作用がなかったことと、
「9日間止められたのならいつでもまた止められる。なら1本だけ」
という、禁煙失敗あるあるを思いきりやってしまったからだ。

1本吸ってしまったら、習慣でダラダラ吸ってしまう。
もちろん病気のことは気になっているので
今まで1日20本だったものが10本までに減っていた。
でも週末に『今週も頑張ったなぁ』などとビールを1本開けてしまうと
たばこの本数も勢い増えてしまう。

「これはダメだな。」

治療を受けるにあたり、私自身いろいろと勉強して
自分でできることは併用してやってみよう、と決めたつもりだった。
それなのに、『今の私の身体には悪いので絶対、止める!』と
最も決意していることが実践できていない。

自分の意思だけでは無理だと判断した私は、
禁煙宣言の翌日にパートナーから渡されていた
近所の禁煙外来一覧を見ていた。
私より先にパートナーはこうなることを予測していたのだろう。
ありがたいやら恐ろしいやら。
もちろん禁煙外来に行くことは事前にC先生に相談してOKをもらっている。

病院を決め、いざ予約の段になった時に
院長が病気のためしばらく休診することが分かった。

「ふうむ」
別の病院にしようかとも思ったのだが、禁煙治療も3か月ほど
通わなくてはいけない。
それを考えると近いほうが有難い。
10日ほどあけて様子を見ると既に診療が始まっていた。

「ふ~ん。そう。あのねぇ、禁煙って禁煙補助薬だけでは
成功しないのよ。自分の意思が必要。分かる?」

50代後半から60代前半の男性院長のなんだか高圧的なモノの言い方が気になった。大きなマスクとメガネで表情があまり良く見えない。

自分の意思が必要なのは分かっているけど
それだけでは失敗したから助けを求めているのではないか。
なんだか3か月もこの先生と頑張れる気がしないな、病院変えようかな、と考えた。

「・・・スケジュールとしては12週間が基本なの。この間は健康保険が適用できますが、これを過ぎると自由診療になるから。また自分で判断して中断した場合は、最初の診察から1年を経過しないと自由診療になります・・・」

頭のなかでこの先生ではないかも、と思っているので
説明している言葉があまり入ってこない。

「・・・このチャンピックスを使うと、副作用として吐き気や変な夢を見たりすることがあるんだけど、精神疾患はありますか?」

う~ん。かつて鬱病を患っていたことは話した方がよいのだろうか。
でも今はそれらの薬は飲んでいないしなぁ。
なんとくなく「いいえ」と答えてしまった。

「じゃ、処方します。良いですね」

この先生に決めた。
私はこれから禁煙をするのだ。自分に都合の良い先生では
また何かしら甘えてタバコを吸ってしまうだろう。

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第26話【禁煙再挑戦】

1時間15分の投薬を終え化学療法室から出て
身支度をしている時にアナウンスが入った。

「O野さん。O野K子さん。◎番診察室へどうぞ」

「へ?」

たった今、投薬を終えたのになぜ呼ばれているんだろう。
しかも私の担当のC先生はその診察室ではないはずなのだが?

いぶかしげに周囲を見回すと、3m先で動き出した車椅子があった。

(もしかして!!)

高齢の女性が座った車椅子を
私と同じくらいの年の女性が押している。親子だろうか。

アナウンスされていた番号の診察室へ入って行った。
今の女性がもう一人のO野K子さんなのかもしれない。
不思議な感じがした。
日本の人口は1億2600万人くらいだから同姓同名の人はいると思う。
でもこの廊下で出会ったのはやっぱり不思議な感じがした。

不思議といえば、私の女の家族は、
祖母・母・私と3代で乳がんになったが3人とも同じ年齢だった。
確かに40代に多い病気だけれども
全く同じ年齢というのも、これもまた不思議な感じがする。

感慨にひたりながらの帰り道、自宅近くの薬局に
禁煙補助薬のチャンピックスを取りに行った。
チャンピックスは、最初の3日間と以降では薬の量が違うのだが、
診察した日は最初の薬が在庫切れだったのだ。
翌日は30分早く閉店することを知らなかったので受け取れず、
そのあとは仕事の都合で営業時間に間に合わなかった。
結局、診察から1週間経ってしまった。

禁煙外来は保険適用に、最初の診察から数えて期限がある。
チャンピックスは服用して7日間は喫煙しても良いことになっていたが、
保険適用内に終えようと考えると、私が喫煙しても良いのは
チャンピックスを服用していようと、いまいと今日までなのだ。

チャンピックスにも副作用がある、と説明は受けていた。
夢の話や吐き気、便秘等…。
投薬の日に始めるのは正直怖かったが、仕方ない。
むしろ私は苦しむくらいじゃないと禁煙出来ないかも、と思っていた。

食事のあとのデカドロン。
最近、これを飲むとなんだか気持ち悪くなる気がしているが、
今日はこれにチャンピックスが加わる。
ベットで横になると悪心が始まった。

投薬3回目で始めて感じるギブアップ感。
テレビの料理映像でさえムカムカしてしまう。

ここまでの悪心は始めてだ。
次回の診察の際に報告が必要だが、原因が投薬なのか
チャンピックスなのか微妙に分からない。
手足の脱力に加えて、気力も奪われていく。

(今、タバコを吸ったら絶対おいしくないよね)

ヨロヨロしながら起き上り、タバコに火を付ける。
うん。思ったよりマズくはないけどおいしくもない。
この「おいしくない」という感覚が禁煙したい人にとって
このあと大事なのよ。

そんなことを自分に言い聞かせながらも
喫煙の思い出が走馬灯のようによみがえる。
会社に当たり前に【喫煙室】とか【タバコ部屋】と
呼ばれる部屋があった頃、そこでは所属や職級を超えた
【喫煙者】だからこその知り合いが出来たり、聞ける話があった。
私が子どもの頃は父親のお遣いで近所のタバコ屋さんに
ハイライト買いに走ってた。200円握りしめて・・・。

う~ん。200円か。
今は410円だから考えるとタバコもずいぶん高くなったね。
節約の意味でも、やっぱり禁煙したい。

 

 

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