1時間15分の投薬を終え化学療法室から出て
身支度をしている時にアナウンスが入った。
「O野さん。O野K子さん。◎番診察室へどうぞ」
「へ?」
たった今、投薬を終えたのになぜ呼ばれているんだろう。
しかも私の担当のC先生はその診察室ではないはずなのだが?
いぶかしげに周囲を見回すと、3m先で動き出した車椅子があった。
(もしかして!!)
高齢の女性が座った車椅子を
私と同じくらいの年の女性が押している。親子だろうか。
アナウンスされていた番号の診察室へ入って行った。
今の女性がもう一人のO野K子さんなのかもしれない。
不思議な感じがした。
日本の人口は1億2600万人くらいだから同姓同名の人はいると思う。
でもこの廊下で出会ったのはやっぱり不思議な感じがした。
不思議といえば、私の女の家族は、
祖母・母・私と3代で乳がんになったが3人とも同じ年齢だった。
確かに40代に多い病気だけれども
全く同じ年齢というのも、これもまた不思議な感じがする。
感慨にひたりながらの帰り道、自宅近くの薬局に
禁煙補助薬のチャンピックスを取りに行った。
チャンピックスは、最初の3日間と以降では薬の量が違うのだが、
診察した日は最初の薬が在庫切れだったのだ。
翌日は30分早く閉店することを知らなかったので受け取れず、
そのあとは仕事の都合で営業時間に間に合わなかった。
結局、診察から1週間経ってしまった。
禁煙外来は保険適用に、最初の診察から数えて期限がある。
チャンピックスは服用して7日間は喫煙しても良いことになっていたが、
保険適用内に終えようと考えると、私が喫煙しても良いのは
チャンピックスを服用していようと、いまいと今日までなのだ。
チャンピックスにも副作用がある、と説明は受けていた。
夢の話や吐き気、便秘等…。
投薬の日に始めるのは正直怖かったが、仕方ない。
むしろ私は苦しむくらいじゃないと禁煙出来ないかも、と思っていた。
食事のあとのデカドロン。
最近、これを飲むとなんだか気持ち悪くなる気がしているが、
今日はこれにチャンピックスが加わる。
ベットで横になると悪心が始まった。
投薬3回目で始めて感じるギブアップ感。
テレビの料理映像でさえムカムカしてしまう。
ここまでの悪心は始めてだ。
次回の診察の際に報告が必要だが、原因が投薬なのか
チャンピックスなのか微妙に分からない。
手足の脱力に加えて、気力も奪われていく。
(今、タバコを吸ったら絶対おいしくないよね)
ヨロヨロしながら起き上り、タバコに火を付ける。
うん。思ったよりマズくはないけどおいしくもない。
この「おいしくない」という感覚が禁煙したい人にとって
このあと大事なのよ。
そんなことを自分に言い聞かせながらも
喫煙の思い出が走馬灯のようによみがえる。
会社に当たり前に【喫煙室】とか【タバコ部屋】と
呼ばれる部屋があった頃、そこでは所属や職級を超えた
【喫煙者】だからこその知り合いが出来たり、聞ける話があった。
私が子どもの頃は父親のお遣いで近所のタバコ屋さんに
ハイライト買いに走ってた。200円握りしめて・・・。
う~ん。200円か。
今は410円だから考えるとタバコもずいぶん高くなったね。
節約の意味でも、やっぱり禁煙したい。