第6話【診断確定】

確定診断の日は朝から空模様が怪しかった。
診断は15時からだったので、ギリギリまで事務所で仕事を片付けてから
病院へ向かう頃には、外は雷と大雨で荒れていた。

それでも私自身の気持ちは、
この数日の「勉強」でかなり落ち着いていた。

そもそも癌は手術や抗がん剤治療、放射線治療をしても
見えない癌細胞があとから再発、というかたちで
出てくる場合があるので【完治】の判断は難しいらしい。
この残っていた癌細胞が再発する期間の目安が5年とされているのだが、
それでも乳ガンは他の癌に比べて
早期に発見出来れば5年生存率が高く予後が良い病気と言われている。

事実、今日結果を一緒に聞くために病院で待ち合わせをしている
私の母は25年前に闘病を経験している癌サバイバーなのだ。
このことは私にとって大きな拠り所になった。

あとは自分の病期と治療法だ。
治療には、お金がかかる。生活もある。
できる限り私は働いていたい。

「まずね、正常な左の写真から見てもらった方が分かりやすいかな」
マンモグラフィーの画像を見ながら、C先生が優しい声で説明を始めた。

(と、いうことは右は正常でないのだろう。)

ひょっとしたら間違いかも、というわずかな希望はそこで捨てた。

(今の私なら大丈夫。)

一度ギュッとつぶった目を開けると
これから説明してくれるであろう机上の診断書が見えた。
私はその文字を自分でも驚くほど冷静に翻訳した。

T2N1M0 ステージ:ⅡB

つまり、

【2cm~5cmほどのしこり。腋下転移あり、遠隔転移なし】

 

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