第3話【患者確認】

希望のC大学病院はB院長の出身病院だった。
母が治療していたのは25年も前だったので、主治医は定年退職されていたが、院長は懇意の医師に電話をかけてくれた。
初診は4日後。
気持ちも落ち着き、私は何度もお礼を言って、紹介状とマンモグラフィーの写真を持ってB医院をあとにした。

C病院初診の日、私は母に同行を頼んだ。
先日のようにコトがどんどん進んでは、今の私には予備知識があまりになさすぎて不安だった。

待ち合わせた母の顔色は私より悪いように見えた。
昨日は眠れなかったらしい。
今日母に同行を頼んだことを私は少し後悔した。

初診受付カウンターへ紹介状と必要資料を提出して待合室の席に腰かけると間もなく名前を呼ばれた。

随分早いな、と思った。

「確認なのですが、当院の受診は初めてですか?」
「はい。初めてです」
「○○クリニックの受診はありますか」
「ありません」
「××センターの受診はありますか」
「ありません」
「分りました。生年月日をお願いできますか」

生年月日を告げると、ではカルテと診察カードを作りますのでお席でお待ちください、とのこと。
受診歴の有無を聞かれた医院は全てC病院の関連機関だ。
初診問診票にもその旨、記入したはずなのだが。

受付のやり取りを腰かけて見ていた母になにごとか、と問われ説明しようとした時、ふと、初めてB病院を予約した時の会話を思い出した。

『あら、O野さん。この前いらっしゃったばかりですよね』
『いいえ、初めてです』

その時、もしかして、とある考えが頭をよぎり、ドキリとした。

数分後、改めて受付で名前を呼ばれ手渡された真新しいプラスチックの診察カードが、私のもしや、が当たっていたことを示した。

そこには赤い文字で印字されたシールがしっかりと貼り付けてあったのだ。
『同姓同名あり』

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA