第9話【高額療養費・限度額適用認定証】

「その診断結果と治療法でO野はいいのか?
セカンドオピニオン受けなくていいのか?
その病気なら◎病院がいいぞ」

受話器のむこうから懐かしい声が矢継ぎ早に質問してきた。
職場との調整が済んだ時
昔、一緒に働いていたEさんを思い出して電話をかけた。
職場の人は知らなかったが、彼も病気を抱えながら働いていたのだ。
それをたまたま私が知ったきっかけは忘れてしまったが、
病院や高額な治療費についての対応方法についての知識には
当時、驚いた記憶がある。

セカンドオピニオンについては家族からも何度も確認された。
今はセカンドオピニオン外来という専門の外来を
用意している病院もある。

順序で言えば、今後の治療方針の同意をする前に、
セカンドオピニオンの希望を伝え、今までの検査資料をC病院から借りて
改めてセカンドオピニオンの診察予約を入れることになる。
同意したあとでも自分に迷いがあれば、申し出ても良いと思うが
時間がかかってしまう。
だから、セカンドオピニオンをするならば、診断結果を待つ間に
他の病院のあたりはつけておくのが良かったのかもしれない。

けれどこの頃には、しこり自体がだんだん大きくなって
痛みも感じるようになっていた。
急いで治療を始めたほうが良い、という先生に
頼み込んで開始も遅らせている。
なによりC先生とのやりとりで感じた、
先生への信頼が私の中で大きかった。
私の中では、今、別の先生の意見を聞きたいという思いはなかった。

「うん、ありがとう。
でも今の先生と決めた治療法で私は納得してる」

意外と私が頑固なことをEさんは知っている。
O野が良いなら、とその話はそれで終わった。

「治療費は大丈夫なのか?」

大丈夫ではない。かなりの大打撃だ。

「高額療養費と医療費控除は利用しようと思ってる」

治療準備でまず最初にやったのは医療費対策についての勉強だった。
私は国民健康保険に加入しているから、
通常は窓口で3割負担の医療費を支払っているが、
1か月の自己負担額が所得区分の基準額を越えた医療費については、
申請をすればあとから払い戻されるのが高額療養費制度だ。
私はC病院での治療費と院外処方の薬代などをまとめて高額療養費で申請し、この対象にならない
通院にかかった交通費などは年度末の医療費控除で
所得税の還付を受けようと考えていた。

「高額療養費だと一時的に自分で立て替えなきゃいけないから、
それが大変でしょうよ」
「うん」
「限度額適用認定証は調べたのか」
「ん?」

いろいろやっているつもりでもやっぱり私は詰めが甘い。
ただ本当に周りの人には恵まれている。

確かに高額療養費の申請では
申請して払い戻されるまでに3か月ほどかかるらしい。
入院手術を考えるとかなりキツイと考えていた。

Eさんいわく「限度額適用認定証」とは予め手続きをして入手した
「認定証」を
病院の窓口に提示すれば、窓口で自分が支払う医療費は、
高額療養費制度の
自己負担限度額までにとなるとのこと。
立て替えなくて良いし、何より具合の悪い時に申請書を記入する必要がない。
あとで詳しく調べたところ、同一病院でも外来と入院では
別計算になるらしい。それでもありがたい。

「さすが、Eさん!ありがとうございます!」
「いやいや。ところでパートナーは元気か?ちょと話したい」

隣で電話のやり取りを聞いていたパートナーに
電話をかわったところ、10分近く話しこんでいた。

『O野が頑固なので、セカンドオピニオンを本当に受けなくて良いのか
是非、君からも説得してくれ』
『そうなんですよ、自分からも言っているんですが《必要ない、必要ない!》の1点張りで困っちゃって』
という私の【頑固話】をしていたらしい。

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA