第8話【職場への報告】

治療方法は決まった。
なるべく早く治療を開始したほうが良い、と先生に言われたが、
副作用がどれだけ出るか分からない。
来週末に控えている大事な仕事のチャンスは、今の状態で挑戦したい。
結局、2週間後に最初の投薬をすることになった。

治療の開始時期が決まったので、次にすべきことは職場への報告だ。
仕事を続けながら治療を行いたい、という希望をC先生に伝えたとき、
大丈夫、そういう患者さんは多い、と言っていた。

『K子さんはね、たぶん副作用大丈夫だと思う』

最近は副作用を抑える薬が良くなっていること、
また体質的に、性格的に、副作用が出ない人も時々いるらしい。

『私の経験的に、あっけらかん、としている人って
副作用が大丈夫って人が多いのよね』

本当かな。でもそれなら嬉しい。

体調を見ながら薬を調節する、とのことだったので
ひとまず職場への報告は、3週間に一度の投薬日はお休み
又は早退をさせてもらえるようにお願いしよう。
今まで健康管理に無頓着だった私は恥ずかしながら
医療保険に入っていない。
そろそろ入らなきゃかね~、と思っていたくらいだ。
貯金もそれほどない。
そしてこの職場は私と社長しかいない。
病気だから今すぐ仕事を辞める、というわけにはいかないのだ。

問題はもう一つの仕事だった。
私は8ケ月前からダブルワークをしていた。
昼間は事務職、夜はパートで接客の仕事だ。
正直、夜中まで立ちっぱなしの仕事は、
年齢のせいか、思っていたよりキツイと感じることもあった。
抗がん剤治療を開始すればさらに体力は落ちるだろう。
髪や眉毛が抜ければ見た目はどれだけ変わるだろう。
自分の気持ちもどうなるか心配だった。
収入が減るのは怖かったが、
今は、続ける自信があるのかないのか分からない。

検査を受けていることは事前に主任のDさんに話をしていた。
Dさんは私の3つ下の中国人女性だ。
夜のパートは退職させてほしい、と話をした。

「O 野さんのコト、全力で応援するよ。これから体、大変だけど、お金もかかるでしょ。今すぐ辞めるんじゃなくて、ちょっと休みってコトにして籍は残しておくよ。上の人には相談しておいた。少なくとも私がいる間は、元気な時だけでも稼ぎに来たらイイよ」

ありがたかった。
周りの人には迷惑を掛けてしまうが、少し様子を見てみることができる。

私はダブルワークの職場の仲間や先輩には、
自分の病気のことを話した。
余計な心配を掛けてしまうかもしれないが、
だいぶ身勝手なシフトになってしまう。
それで許してもらおうというわけではないが、説明はしておきたい。
そして何より、本当に続けていくことが出来ない、となった時に
ちゃんとご挨拶できるかも心配だった。
自分が休んでいる間に他の仲間もいろいろな事情で退職して
会えなくなっている場合もあるだろう。
まだ8ケ月しか経っていないが、忙しい職場だったので
わりと早い段階で私は「仲間」という意識があった。
せっかく一緒に働いた人たち。
とりあえず後悔をしないように挨拶はしておきたかった。

さすがに驚かれてしまったが、
「分った。こちらは大丈夫。
というか、今まで無理しすぎなんだから、
今回はちゃんと体調第一で治療してね。
きっと大丈夫だから。でも、戻ってきてよ!!」
と声を掛けて頂いた。本当にありがたかった。

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