第34話【ラブレター】

8月のお盆明けから名古屋にいる弟夫婦が
甥っ子を連れて実家に遊びに来るというので
私もパートナーと共に週末に帰省した。
義妹によると私が甥っ子に会うのは3年ぶりとのこと。
久しぶりに会った甥っ子は小学校1年生になっていた。

あんなに人見知りだった甥っ子が、
すっかり人懐っこい甘え上手になって
久しぶりに会う伯母はもうすっかりメロメロの、
でも一緒に遊ぶ体力もだいぶ落ちてしまったので
ヘロヘロにされてしまいましたよ。

幼稚園の数年と小学校の数か月、
このちっちゃい男の子なりに世間の波にもまれて成長したんだね。
そしてきっと、あっと言う間に中学生になって大人になってしまうんだね。

「いやいや、お義姉さん、それはいくらなんでも気が早いですよ。
その前にもっと会いましょうよ。」

的確な突っ込みを頂いた。

弟家族が旧友に会いに出かけている間、
私はかつて自分の部屋だった場所の
荷物を少し整理しようと試みた。

実家には荷物はほとんど残していない。
ただどうしてもなんとかしないといけない物が少し残っていた。

日記と手紙。

残している日記は小学生から中学生にかけてのもので
誰某ちゃんとケンカしただの、誰某くんがカッコイイだの、
今読み返すと、本当にどうでも良い内容で、
それでいて結構、恥ずかしい内容なので開いていない。
でもなんとなく捨てられない。
人に見られたら恥ずかしいので残したくないのだが、
やっぱりまだ捨てられない。

次は手紙が入っている箱。

もっと赤面するものが入っていた。
10代から20代にかけてもらった、いわゆるラブレター。
幸せな頃のもあれば、恨み辛みが書かれた最後の手紙もあった。
恨み辛みの手紙は、当時は腹が立ったけれど
今読み返すと胸が痛い指摘ばかりだった。
これがいわゆる「若すぎて」ってヤツか。ごめん。
それにしてもよくこんなに取っておいたね。私。
これもやっぱりまだ捨てられないな。

最後に見つけたのは、母子手帳とへその緒が入った小さな箱と
保育園の頃、母と先生がやりとりしていたノート。
どうも私も甥っ子と同じで、入園当初は内気で人見知りだったようだ。
身体を動かしたりすることも苦手で、
教室の隅にポツンとしていることが多かったみたい。
それが保育園のいろんな行事を通して周りのお友達と仲良くなって、
苦手な鉄棒や山登りなど黙々とできるまで
一人努力する子どもになっていったらしい。
この間の母と先生のやりとり。
どちらが上、ということもなく対等の立場で私を心配してくれて
そして成長を喜んでくれているやりとり。

くぅ。
愛されて育ったんだな。感謝、という言葉しか出てこない。
私も社会に恩返しする年齢になっているのに、できているだろうか。
自分のことしか見えなくなったとき、読み返そう。
だからこれは捨てないで取っておく。

あぁ、結局またどれも捨てられなかった。

ちなみに、保育園のお誕生日カードに
【将来は何になるの?】という先生の質問と私の回答が書いてあった。

私は【看護婦さん(当時の表記)】か【歌手】になるんだって。

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