術前検査は【超音波】【MRI】をすることになっていた。
手術の前に最終的に検査をして備えるのだそうだ。
それぞれ何度か経験しているので特に不安はない。
通常は待たされることも多いのだけれど、入院患者ということで
外来の検査が終わるまで病室で待機できた。
朝の10時に入院し、麻酔科の先生の話を聞いて同意書にサインをし、
昼食を食べただけなのだけれどなんとなく眠くて仕方がなかった。
ベッドで横になっていると看護師さんが声掛けに来てくれたので
寝ぼけながら検査を受けた。
MRIは特に問題なく終わった。
あとは超音波検査。これもいつも通り終わるだろうと思っていた。
ただ今回、私の検査に立ち会っている検査技師の方がいつもより多い気がした。
たまに若い技師さんや海外の学生が【研修】しているからかな、と思った。
その場合はなんらかの断りとかいつもあるのだけれど。
ま、いっか。
なんて思っている間に右の検査が終わった。
この日は手術の箇所を示すためにペンで印を描かれる。
「じゃ次は左をチェックしますね」と検査技師の方が言った。
思わず「はい。」と答えたけれど(?。左も?)
手術するのは【右胸】なんだけれど。
念のためなのかな?
いつもの検査でも左右行っていたから
あんまり何も考えていなかった。
すぐ終わると思った左胸の検査。
いつもより多い検査技師さんたちが画面を見ながら何やら話し込んでいて
右側より時間がかかっている。
いくらなんでも時間がかかり過ぎじゃない?
割とのんびりしている自分もさすがにイライラしてきた頃に、
「じゃ、マークつけていきますね」と言われた。
(?????)
そのマーキングもえらく手こずっているようだった。
画面を見ているベテラン(と思う)技師さんの指示に従って
最初は若い人が印を書いていたのだが、意図した箇所ではないのか
なんども修正して、結局ベテランの技師さんが書くことになった。
(もしかして、勘違いしている?)
ぎょっとした。
なんでか分からないけど、手術の必要がない左胸が切られてしまうかもしれない。
いわゆる「医療事故」?
急に怖くなってきたので、胸をさらしたまま勇気を出して言ってみた。
「あの、手術をするのは右側なのですが」
言った瞬間、検査室の場が固まったのをハッキリ感じた。
少しの沈黙のあと、ベテラン技師さんが戸惑ったように、
でもできるだけ私を気遣うように確認した。
「C先生からお話しは伺っていないですか?」
状況がよく理解できなかったので今日の流れを話して
C先生にはまだ会っていないことを伝えた。
若い技師さんが部屋を出て行きどこかへ連絡を取りにいったようだ。すぐに戻ってきた若い技師さんがベテラン技師さんに耳打ちする。
「このあとC先生がご説明しますからね。
とりあえず印だけつけておきますからね」
どうして手術の必要がない左胸にも印をつけるのか、
その理由はそこでは話してもらえなかった。