ドセタキセルはとにかく身体が痛かった。
そしてあっと言う間に太った。
鏡を見るたびにため息が出た。
治療のための投薬で見た目が変わるほど太ってしまうのは
実は初めてではない。
5年前、うつ病の治療をしていた時に処方された薬も
体重が激増するものだった。
その後、元の体重に戻すためどれだけの努力をしたか、
辛すぎてなのか、加齢のためなのか
よく思い出せない。
さらにため息が出た。
人間、見た目がすべてではないけれども、見た目も大事なのは確かで
この頃にはすっかり人に会うのが嫌でたまらなかった。
加えて身体の痛みで、毎日自分のことで手一杯になった。
一人スタッフの職場は、
自分のペースである程度仕事ができる気楽さがあったが
もうすぐ迎える入院中の業務対応や
手術直後は思うように動かないであろう
身体を考えると、一人で全てを行う職場で働くことに限界を感じた。
治療を始めるにあたって、
いつかは退職しなければならないんだろうな、と感じていた。
だからこの5か月、なんとなく日々の出会いの中で
わたしは業務を引き継げる方がいないか探していた。
幸運にも少し前から事務所の仕事を手伝ってくれていた方が
承諾してくださったので、手術の3週間前にわたしは退職した。
手術まで2週間。気づくと秋もだいぶ深まっていた。
手術をしたら、当面、利き腕が不便になる。
わたしの家では、力仕事はわたしが担当なのだ。
手術を終え、退院する頃には年末の大掃除が待っている。
掃除は大好きなのだが、今年はほとんどできないだろう。
少しでもきれいな部屋で新年を迎えたかったのか
手術や術後の生活への不安を忘れようとしていたためか、
この頃のわたしは、ただただ掃除ばかりしていた。